1 相続人及び相続財産調査

被相続人の財産を相続する人を相続人といいます。民法では、その範囲(法定相続人)や相続できる順位、財産の取得割合が決められています。被相続人の財産に属した権利義務は、原則として相続できますが、被相続人の一身に専属した権利義務は、相続の対象になりません。被相続人の財産に属した一切の権利義務を相続財産といいます。

相続財産には、土地・建物のような不動産、自動車や美術品のような動産、預金のような債権などのプラスの財産だけでなく、借金のようなマイナス財産も含まれます。人が亡くなったら、まず相続人が誰で相続財産は何かを調べて、それを確定する必要があります。

相続人を確定するには、被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍を取寄せる必要があります。本籍地がある市町村役場に除籍謄本、原戸籍謄本、戸籍謄本、戸籍の附票などを請求し調べます。請求者の住所地以外の役場から戸籍を取寄せるには7日から10日位の日数がかかります。

相続人の戸籍謄本、住民票か戸籍の附票なども必要になります。除籍謄本や原戸籍謄本の手数料、往復の切手代などの費用がかかります。請求先の役場から確認のために連絡が来ることがあり、それも平日の執務時間内とされており、お仕事をされている方にはなかなか面倒です。

2 代襲相続

相続人である子や兄弟姉妹が先に死亡した場合に、その直系卑属(子や孫)が相続人となります。これを代襲相続という。代襲相続は子や兄弟姉妹が欠格や廃除により相続権を失った場合にも認められます。相続人である子が死亡するなどの代襲原因があるときは、この子(孫)が代襲相続し、孫に代襲原因があるときは孫の子(曾孫)が代襲相続します。これを再代襲といいます。兄弟姉妹の代襲相続については再代襲は認められていません。

3 不在者財産管理人選任             

相続人の中には、本籍地が頻繁に変わっている人、所在不明の人などがいたりします。所在不明の人がいる場合、他の相続人はその人の財産を管理するための不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申立て、その管理人と遺産分割協議を進めることになります。選任までの期間は、ケースによって異なりますが3、4ケ月かかることもあります。申立てる先は、所在不明者の従来の住所地又は居所地を管轄する家庭裁判所です。所在不明者がいる場合、家庭裁判所に失踪宣告の申立てをすることもできます。

4 寄与分

共同相続人のうちに、被相続人の生前にその財産の維持、増加のために特に貢献した者のある場合には、遺産分割の際にその相続人に寄与の程度等に応じて相続分以上の財産を取得させようとする制度。寄与の方法は、被相続人の事業に関する労務の提供、または財産上の給付、被相続人の療養看護そのたどんな方法によるものでもよいが、特別な寄与のみに認められます。 相続人以外の親族が被相続人の療養看護等を行った場合、一定の要件のもとで相続人に対して金銭の支払いを請求することができます。

5 家庭裁判所の判断を経ずに預貯金債権を払戻し

各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権の内、一定額については標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式費用その他事情を勘案して、単独での払い戻しができるようになりました。

6 遺産分割協議

被相続人が遺言を残さずに死亡し、複数の相続人がいる場合は、相続人全員で協議し契約することにより、民法で決められた法定相続分とは違う配分にすることもできます。これを契約文書にしたものが遺産分割協議書です。協議がまとまったら、後日の紛争を避けるため遺産分割協議書を作成します。書類には相続人全員が署名押印し、それぞれが1通ずつ保管します。

相続人が多く各地に散らばっている場合は、各相続人に遺産分割協議証明書を送り作成してもらう方法もあります。不在者財産管理人が選任されている場合は、管理人を選任した家庭裁判所から遺産分割協議書案の提出を求められます。不在者の相続分が確保されていれば問題がないようです。他相続人全員の協議がまとまったら不在者財産管理人は家庭裁判所に不在者の財産を処分するための権限外行為許可を得た上で遺産分割を行います。

相続人の人数が多くなると連絡文書を送っても一切応答がない人や相続分の内容で折り合わないこともあります。遺産分割協議がまとまらなければ相続人の誰かが(1人または数人)相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをします。調停の話し合いが不可能なときは、遺産分割審判の申立てができます。

遺産分割調停・審判の申立をする場合は、管轄する家庭裁判所とよく連絡をとってからやらないと時間と費用が無駄になることがあります。

7 遺言書案の作成

相続争いを防ぐため、あなたの財産を守るためにも、遺言書は必要です。遺言は法律上決められた形で書面に残されたものでなければなりません。  

◎ 自筆証書遺言      

最も簡単にできますが、決まりを守らないと無効になってしまいますので、慎重に作成する必要があります。平成31年1月13日から要件が緩和されました。遺言書のうち目録に示す不動産や預貯金口座などはパソコンで作成したり不動産登記事項証明書や預貯金通帳のコピーが認められるようになりました。ただし、全てのページに署名・押印が必要。財産目録以外の部分は自筆で作成しなければなりません。      

◎ 公正証書遺言      

公証人が作成するので、内容や形式が確実です。原本が公証人役場に保管されるので、改ざんや紛失の恐れもありません。ただし、費用がかかりますし、同行することになる証人(2名以上)にも内容を知られます。

◎ 秘密証書遺言      

どうしても遺言の内容を秘密にしたい場合は、秘密証書遺言が適しています。自分で完全な遺言書を作成して公証人に提出し、自己の遺言書であること、遺言書の作成者の氏名・住所を申述べなければなりません。公証人が日付、申述べを封紙に記載し、公証人、遺言者、証人が署名押印します。この場合の証人も2名以上が必要です。 

8 相続手続きは早めに 

相続手続きを長年放置しておくと相続人であった人が亡くなり、その人の配偶者や子供が相続人となり、相続人が増えてますます大変になります。相続が発生したらできるだけ早く手続きを進めるとよいでしょう。

当事務所では、相続人・相続財産の調査、相続関係説明図の作成、遺産分割協議書の作成等についてお手伝いを致します。